千葉 直紀

DEは関係構築に始まり、関係構築に終わるといっても過言ではない。しかしそこには、ベストプラクティスも成功を約束するレシピも存在しないものだ。

 「人間」の言葉が「人と人の間」とあるように、人は他者との関係性の中を生きている。これは評価でも同じであり、関係構築はすべての基本である。

 特に評価者(伴走者)は通常、外部の人材であることが多く、批判的な視点で事業を見たり、相手にとって耳の痛いフィードバックをおこなわないといけないことがあるだろう。評価者は、事業者との良い関係構築ができていなければ、相手から必要な情報を必要なタイミングで得にくくなるかもしれないし、たとえ事業者に有用なフィードバックをおこなっても関係性が良くないと相手に響かないかもしれない。

 逆に関係構築がうまくできていると、評価に対する事業者の主体性が増したり、評価者は表になかなか上がってこないインフォーマルな情報にもアクセスできるようになるだろう。

 DE(発展的評価)として介入、伴走を始めたその瞬間から関係構築が始まり、そこには終わりがない。すべての仕事の基本であるが、「こうやるべき」というマニュアルや「こうやればうまくいく」という正解はない。

 別の引き出しに掲載した資料、Prezi『DEやってみよう!』では、関係構築に必要な姿勢・スキル・効果などを次のようにまとめたので、ここで一部紹介したい。

<DEの関係構築に必要な姿勢>
・伴走先団体やスタッフに対するリスペクトを持つ
・現場の活動をよく理解する(例えば、一緒に作業をして汗をかく)
・対等でフランクな関係を構築する(例えば、打ち合わせ以外でも一緒に食事したり、飲みにいく)
・先入観なしに関わること
・ありのままの自分を出すこと
・評価を前面に出さないこと
・伴走先団体を理解する姿勢を示し、組織の文化や団体やスタッフが大切にしている価値を大切にする

 別の資料『発展的評価事例集(Developmental Evaluation Exemplars)』の第7章に記されている「マオリ系(Māori)及び、太平洋島嶼国系(Pacific People)の若者が、教育において成功する事を目指したコミュニティ主導プロジェクト支援」の事例では、評価者であるKateらはDE実践を通した学びを以下のようにまとめている。

・発展的評価の根本には「関係構築」がある
・「関係」において、評価プロセスは始まり、学習や変化が起こる
・「関係」は発展的評価においてはビジネスそのものである
・とりわけマオリ系・太平洋島嶼国系の人々にとっては、我々のスキルや知識よりも、我々の歴史や他の「関係」の方が大切
・評価者は関係する人々・組織からの期待に対して、批判的に観察・分析する必要がある
・相手と信頼関係を築くことについて、ベストプラクティスは存在しない
・相手と信頼関係を築くことについて、成功を約束するレシピも存在しない

 いかがだろうか?

 別の引き出し【DE実践の『8つの原則』】の「イノベーターとの共創」の原則にある通り、事業者(イノベーター)との関係が良好でないと、事業を通した価値創造や課題解決に繋がらないことは自明だろう。

 DEの実践を志すならば、すべてにおいてついてくるのが「関係構築」であるが、成功パターンはないし、相手によってそのやり方を変える必要があるかもしれない。ぜひ重要性を認識して意識的に関係構築に取り組んでいただきたい。